アトリエ・アリスワン

フリーランスライター・ディレクターの竹内ありすです。

退職の相談をした夜のこと

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こんにちは!ありすぅです。

 

開業届を出して個人事業主になるまで、あと数日。

 

たぶん、この先ずっと忘れられないだろうな〜と思うのが、退職の相談をした仕事帰りの時の気持ちです。

 

ここにも書き留めておきます。

 

 

■物心ついたときから、常になにかに所属していた

 

この世に生まれ、人の名前を覚えたり、考えごとをしたり、……つまり物心つくようになってから今まで、途切れることなくさまざまなことに所属してきました。

 

その所属というのは、たいていが学校や職場といった、1日の大半をそこで過ごす系。3歳の終わりから幼稚園に通い、会社員である今にいたるまで、ず〜っとです。

 

そのほかでも学生のころは習いごとや部活、サークルにもいたので、春が来れば発表会、夏はコンクール、などなど目まぐるしく過ぎていく1年間が積み重なってここまで生きてきました。

 

ある日、上司に退職の相談をして、そのとき書類とかはまだ取り交わしてないけど事実上、春からはひとりになることが決まった日。

 

冬に向かって一直線に気温が下がっていく季節だったので、ポケットに手を突っ込みながら会社からバス停までの道を歩いて。バスがくるまで、寒いなと思いながら暗闇のなかにいました。(バス停とは名ばかりで、照明や屋根がまったくないんです)

 

 

 

■その日に吹いた風のこと

 

なににも所属しなくなるって、いつぶりなんだろうかとこれまでの人生を振り返りました。そしてそれがすぐ、幼稚園に入園する前だということがわかったのです。

 

文字もほとんど書けなくて、話せる単語はほんのちょっとで、見てる世界は自分と家族と教育テレビの番組(今はEテレですね)と絵本くらいで。

 

よく、人は下のきょうだいができると赤ちゃん返りをするって言いますよね。赤ちゃん返りというか赤ちゃんのころの心境を詳細に思い出そうとしてみたら、「なににも所属してなかった前の期間」があまりにも昔すぎて、面食らってしまいました。

 

そのとき、ちょっと弱い風があたりを吹いていって。

 

たしかに季節は冬に向かっていっているけど、秋からの移り変わりをちょっと名残り惜しむような、そんな温度の風でした。

 

風向きも風速も私にはわからないので、バス待ちでその場に止まっている私にとって、これが果たして追い風なのか向かい風なのかもわからない。ただただ、髪やポケットに突っ込んだ手のあたりをふんわりと撫でていくだけ。

 

風が吹いてきて思い出したのが、数年前から言われている「風の時代」という言葉です。

 

もともとは西洋占星術で使われている用語だったそうですが、世の中の流れに合わせて、多くの人が知る言葉になりましたね。

 

個人の特性やライフスタイルに合わせた働き方や、コミュニティが増えていく。価値を置く場所が変わっていく、など…… なんだか不思議な気持ちになりました。

 

いつもこのバス停で考えていたのは、「今日の夕食なに作ろうかな」「なんか思ったより仕事の進み具合良くなかったな」「定期券切れそう、週末買いに行かなきゃ」などの生活に直結したことばかりで、あんまり吹いている風のこととか意識したことなかったな。

 

これから、風のように自由な働き方をするようになる。その風が強いか弱いかなんて、捉え方はその人次第。追い風か向かい風かどうかは、風をよく見ている人にならきっと分かってもらえる。吹いてきた風で、私はそんなことを思いました。

 

 

あの日から数か月たち、雪が降ってやみ、文字通りの三寒四温を繰り返して、あたたかな風が吹くようになってきました。春です。

 

それでも私の心の中には、あの日の風が忘れ去られることなく吹きつづけるのでしょう。